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アヤナザのポルトガル通信
第84回:大雨のマルヴァオンで出会った山のレストラン
2025.09.26
マルヴァオンといえば「天空の村」とも呼ばれるポルトガル屈指の美しい村。しかーし!!今回私達が訪れたのは、あいにくの大雨の日。
山道を車で登るにつれて視界はどんどん悪くなり、「本当にたどり着けるのかな?」と不安になるほど。そんなとき、ふと現れた小さなレストラン。雨から逃げ込むようにレストランへ入店。今日はそんな駆け込み寺のように入ったレストランの話です。
マルヴァオンに行くまでは傾斜がなかなかすごい山をズンドコズンドコ車で登って行かなければならないので、雨が酷すぎると本当に怖い!!!ガードレールがないポルトガルの山道は恐怖です。
まるで隠れ家のように、木々に囲まれて静かに佇んでいるレストラン
Restaurante Tapada Do Poejo
写真は雨が止んでから撮ったので伝わらないかもしれませんが、大雨の中見た時は、レストランなのか家なのか分からない雰囲気のお店。しかし迷ってもいられない!と思い、逃げ込むようにドアを開けるとすぐにふわっとオリーブオイルやハーブの香りが広がり、胸を撫で下ろしました。
店内は昔ながらの田舎の雰囲気で、オーナーさんも気さくに声をかけてくれるから居心地も抜群。中には驚いたように私たちを見るオーナーさんとポルトガル語が話せないサイクリングできたアメリカ人の3人組。
みんなが心配してくれたのを見て「あ、いい店に来たな」と直感しました。
こういう食堂感がたまらなく好き!なんていうんだろう・・・ここにポルトガルの歴史と本物が詰まっているような・・・そんな気持ちでワクワクさせてくれるのです。
数年前まではポルトガルもこんなお店で溢れていたのに、今はリスボンではもう見つけることもできないような絶滅危惧種的お店。それだけでもう大満足。プラスあの恐怖の雨から逃げられたことにも感謝です。
スターターはこの地方でとれたチーズのケージョフレスコから。
メニューも多いお店ではなさそうだったので、とにかく急いで今日のおすすめをお願いしました。子供達がライスを食べたいと騒いだので、ライスと一緒に!というと無さそうだったので「適当にあるもので」とオーダー。(ポルトガルはメインと一緒にライスかポテトが選べることが多くあります。選べなくても何か炭水化物があるか聞けば「ライスならあるよ」とか「ポテトならあるよ」と言ってくれます。)
今回は、ポテトならあるよと言われたので、ポテトを頼むと明らかに手作りのバタタフリタがササっと登場。子供達がお腹を空かせていたのが心配だったようで急いで出してきてくれて、とても嬉しく感じました。
そんな感じで熱々のバタタを子供たちがムシャムシャと頬張っているうちに、今度はテラコッタの可愛いお鍋がそのままドドーンと登場。このまま出してくれるのが、またとっても嬉しい。
一品目は、オーナーオススメのフェイジョアーダを頼みました。入店時にお米が食べたいとぐずっていた子供たちを見て、中から少しだけならあったよとご飯まで出してくれたオーナー。そういうポルトガル人の優しさが嬉しいよね。
外は大雨と霧でとても寒い日、美味しいフェイジョアーダが身にも心にも沁み込みます。
お鍋を開けると家族全員でワァと歓喜してしまうほどの迫力。
フェイジョアーダ(Feijoada)は、ポルトガルを代表する家庭料理のひとつ。名前の由来は「feijão(=豆)」からきていて、文字通り豆が主役の煮込み料理です。
白インゲン豆がたっぷり。そこにチョリソや豚肉の煮込みがごろっと入っていて、見た瞬間「これは重そうだな…」と思ったのですが、ひと口食べると想像よりも優しい味わい。豆のほっこり感と、肉の旨みがスープに溶け込んで、どこか懐かしい気持ちになりました。
地域によってレシピは少しずつ違うそうで、北の方ではキャベツやケールなどの青菜と一緒に煮込むことが多く、南では豚肉をふんだんに使ってボリューム満点に仕上げるのが定番とのこと。
レストランによってはオレンジのスライスが添えられていて、それを一緒に食べると爽やかさが加わり、重くならず最後まで楽しめるそうです。
日本の「お米とお味噌汁」の感覚にちょっと似ていて、豆とご飯を合わせて食べると不思議と落ち着くんです。
旅先で食べる料理って、その国の人たちの暮らしや文化がぎゅっと詰まっているもの。フェイジョアーダもそのひとつで、食べながら、あぁ今ポルトガルにいるなぁ・・・幸せだなぁ・・・と感じました。
そして1番のおすすめとして出てきた、Sopa de tomate(ソパ・デ・トマテ)、つまりトマトスープです。これもポルトガルを代表する家庭料理です。
日本で想像するなめらかなポタージュタイプとはちょっと違っていて、ポルトガルのトマトスープはもっと素朴で、“家庭の味”というイメージが強くごろごろと中身が入っています。
基本はトマトをベースに、玉ねぎやピーマン、オリーブオイル、にんにくをじっくり煮込んで作られます。仕上げにパンを浸して、半熟のポーチドエッグを落としたりするのがポルトガル流。
スプーンを入れると黄身がとろりと広がり、トマトの酸味とまろやかさが絶妙に混ざり合います。
いつも思うけれど、名前はスープとついていますがやっぱりスープじゃないよね。
アレンテージョ地方では、干しパンとハーブ(コリアンダーなど)をたっぷり加えた濃厚なスタイル。アルガルヴェ地方では魚介を加えることもあり、郷土料理っぽい感じでもあります。
最後のショーケースに発見してしまったのがアレンテージョのあの食べ物、セリカイア。
こ・・・これは!!!食べないわけにはいかない!!!!と最後の一切れをすぐにオーダー。
ポルトガル・アレンテージョ地方を代表する伝統的なスイーツのひとつ。見た目はふんわりした大きなスポンジケーキのようで、表面にシナモンがたっぷり振りかけられているのが特徴です。ポルトガル語では「Sericá」や「Sericaia」と表記されます。
見たこともないエスプレッソカップと共に・・・。笑
セリカイアはそのままでも十分美味しいのですが、本場エルヴァスでは「Plums of Elvas(エルヴァスの砂糖漬けプラム)」を添えて食べます。ここマルバオンでもプラムのシロップ付きでした。
ふわふわのスポンジに、甘酸っぱいプラムのシロップがじゅわっと染みて、口の中で絶妙なハーモニーを生み出すんです。これはアレンテージョでしか味わえない特別な組み合わせ!
こうして偶然逃げるようにして入ったお店で、郷土料理の美味しい食べものをたくさん食べて大満足。
外は大雨で寒い日でしたが、温かい料理と人の優しさに包まれているうちに、雨もようやく止み、無事にポウザーダまで出発。
「悪天候の旅」だったはずが、忘れられない美味しい記憶として残る一日になりました。
こうして、なんとかマルバオンのポウザーダに到着したのでした。
マルヴァオンの旅は、思い通りにいかない天気から始まりましたが、雨の日だからこそ、偶然出会えた「隠れ家レストラン」での時間は特別な思い出になりました。
ポルトガルはこういう偶然の出会いに恵まれることが本当に良くあるので、やめられませんね!
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ポルトガル食品輸入会社ポルトドポルトのバイヤー。10代の頃からフランス、オーストラリア、ブラジルと様々な国々にて10年ほど海外生活を送った後、西洋文化の中ではポルトガルが日本人に1番合うと確信。オーストラリアNSW州立ウェスタンシドニー大学を卒業後、ブラジルで就職。帰国後ドイツ系会社で社長秘書を勤めた後、夫と共にポルトガル食材輸入会社を起業。ポルトガル語、英語、日本語の3ヶ国語を話す。
NHK総合の人気番組「世界は欲しいモノにあふれてる」に出演後、ラジオゲストや、NHK文化センター講師など、幅広く活躍中。